関所破りとは何?罪になる?関所破りのQ&Aと箱根、新居の実例を説明
関所破り(せきしょやぶり)とは、関所を避けて近くの山などを通り通過することです。
関所は幕府が街道の通行人を調べる施設です。特に江戸に入る鉄砲、また江戸から出ていく女性たちへの取り調べは厳しく、入り鉄砲に出女と呼ばれました。
関所を通るには地元の奉行所などで発行してもらった通行手形が必要です。
もし無ければ通してもらえませんし、避けて通るなら関所破りとして罪人になってしまいます。また関所破りは重罪なのです。
見せしめのためです
もし関所破りが簡単だと思われると、関所の権威、つまり幕府の権威を失墜させる事になります。
それを避けるために庶民はもちろん、大名の妻子であろうと関所破りは重罪としたのです。これにより関所破りを未然に防ぐ事ができました。
基本、【死罪】です。
公事方御定書(くじがたおさだめがき)という幕府の法令によると、山越えなどで関所破りを行ったものはその場で磔(はりつけ)。
男性に誘われて関所破りを行った女性は【奴】(やっこ:身柄を所望する者に与えいなければ牢舎)。
案内をした者もその場で磔。
関所をコッソリと忍び通った者は重追放(特定地域からの追放)、女性は奴という処分でした。
箱根の関所での実例です。元禄十五年(1702)。伊豆国大瀬村(静岡県)出身の『お玉』という女性は、江戸で奉公していましたが故郷が恋しくなり実家に帰ろうとします。
しかし厳重に警護されていた箱根の関所を避け、山に入ると関所役人が設置した柵に引っかかり、村人の通報を受け捕まってしまいます。
お玉はそれから2ヶ月間牢屋で過ごし、4月に処刑されてしまいました。
ただこの時、関所破りは磔という重罪でしたが、お玉の場合は刑が1ランク軽くなり、獄門(斬首後にさらし首)に処せられました(それでも死罪ですが)
文政十二年(1829)。長崎奉行の努めを終えて江戸に帰ることになった本多正収(ほんだ まさとき)の家臣・三輪弥十郎の中間(ちゅうげん:身の回りの世話をするけらい)だった与七は、長崎滞在中に知り合った『せい』という女性を故郷の安房国(あわこく:千葉県南部)に連れ帰りました。
この時、せいの通行手形は無く、新居関所(静岡県湖西市)を避けるために東海道二川宿から浜名湖北を山越えし、さらに小岩、市川でも関所破りをした事が発覚。
与七は捕らえられて牢で亡くなります。享年32。しかし幕府の罪の重さを示す処分がここからです。
なんと与七の遺体は埋葬されずに塩漬けにされ、新居関所近くの松山村まで運ばれて、天保二年(1831)8月16日に磔にされました。
私の感想ですが、見せつけのためとはいえ、そこまでするか〜?と思いますね。
さらにこの事件に関係したとされる21名も処罰されるという、大掛かりな事件に発展しました。ちなみに計22名の処分の記録も残っています。
氏名 | 職業・身分 | 罪状 |
---|---|---|
西村新三郎 | 本多の近習 | 死罪 |
島田惣之助 | 本多の足軽 | 死罪 |
たき(振袖) | 長崎の遊女 | 奴 |
かね(歌扇) | 長崎の遊女 | 奴 |
清蔵 | 商人 | 探索 |
与七 | 本多の中間 | 磔 |
せい | 長崎小商い | 入牢 |
いさ | 長崎洗濯女 | 入牢 |
とよ | 長崎少商い | 入牢 |
はな | 長崎洗濯女 | 入牢 |
相馬弾正 | 神事舞太夫 | 押込 |
本多近江守 | 御弓持頭 | 閉門 |
西島安右衛門 | 本多の近習 | 押込 |
三輪弥十郎 | 西島の家来 | 押込 |
その他八名 | 過科 |
※新居関所資料館より
閉門とは:自宅の門扉や窓を閉ざして1日中出入りできない謹慎
押込とは:自宅や自室の前に戸を立て謹慎すること
関所破りは重罪で許される事はありませんが、役人による人情話も残ります。
病で倒れた親が待つ実家に帰りたいと、通行手形を持たずに関所を訪れた女性に対し、『関所は通さん。すぐに帰れ!』と言い、西門から入ったのに東門から追い払うという事をした話。
また兄弟の仇討ちのために関所を通した話も残ります。
江戸時代は仇討ちはなんと公認されていた。しかし関所通行は手形が必要で別問題。
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